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日本の歯科の現状リターンズ②・・・前のシリーズのおさらい

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週末高校時代の同級生と久しぶりにあって飲み会。

 

そのときに聞かれました。

「ブログ読んでるよ!おたくの業界って儲からないんだってねー!」と。

 

今年の夏あたりに私が日本の歯科界の現状をシリーズとしてブログで書いたんですね。

「昔は利益、収入という意味で、いい職種だったのが、2011年現在ではそうそうおいしい職業ではないんですよ!」って。

(念のために補足しておきますが、手間暇かかるわりにはそれに見合った価格評価を保険ではしてもらえてないということです。食うに困るほど貧乏しているという意味ではありません。言っちゃーなんですが、昔は今と比べると大ざっぱな治療でも、ある意味Okだったんです。今なら60分かかるところを10分でやったり・・・。1人の歯科医で1日100人みていた時代の話・・・。)

 

このシリーズ、なぜわざわざ業界以外の方に聞かせる必要があったのか。

 

決してネガティブな感情を呟いていたのではなくて、このままだと歯科医側ではなく、治療を受ける患者さんにとって大きな不利益にしまうと思ったから、なんですね。

ネガティブ発言は、大阪のスーパーデンティストの南先生に叱られますから(笑)

 

数回にわけて書きましたが、現状の保険制度では労働や材料コスト、機械のコストに見合った報酬がないため、たとえ患者さんがたくさんきたとしても、薄利多売の治療しかできないということです。

報酬が少ないと、安い材料を選んだり、いい器械を買えなかったり・・・。治療工程をはぶかないと仕方がないことも・・・。

 

言いましたね、初診料だけとっても医科と歯科では500円くらいも差があると。(H23年11月現在)

 

本当は900円近く差があったんですが、「そんなのおかしいじゃん!」と歯科界が訴えてきて、ようやく2年前に少しばかりの改正があったんです。多くの歯科医は思いました。

「これをきっかけに少しずつ変わるかもしれない!」と

 

おもった矢先

3月11日。

 

日本は歯科医療費の改正を考える状態ではなくなりました。

おそらく次期の保険見直し改正ではもっと悪い状態になるかもしれません。

 

そうなると誰が困ると思いますか?

 

勿論歯科医はこまります。

 

ですがもっとも困るのは患者さん自身だと私は思うんです。

 

 

保険で治療をやらずに、すべて自費でやっている歯科開業医もいます。

すべて自費でやるということは、法律でも問題ありません。

 

ようするに、採算がとれない分野が多くなると、

「いい治療したいなら、保険ではできません。自費治療になります」という歯科医院今後はもっと増えていく可能性があるのです。(実はTPPの混合診療合法化はそれに拍車をかけるかもしれません)

 

最新の治療は高額な材料や機械が必要なことも多いですから、よほどお人よしな先生でもないかぎり、毎回採算割れするようなことはしないでしょう。

つまりお金のない人はあちこちの歯科医院で

「うちで治療すればすごくよくなるけど、お金がない人はやれません!」って門前払いされてしまうかもしれないんです。(これって実はアメリカでは医療界全体がこんな状況ですよね、重症でも門前払いさせられたり)

 

歯科医側からすればせめて諸外国の半分、いや1/3でも仕事に対する評価があれば、もっといい治療を保険でできるのに!と思うわけです。(歯の根の治療は、アメリカの1/20、フィリピンの1/10くらいの値段といいましたね)

 

歯科医、患者さん以外に影響がでるのが、歯科関係スタッフ。歯科医院の収入は当然、スタッフの給料に影響してきます。まあ歯科衛生士さんの場合は日本全国、慢性の人員不足なので、パートでも一般職よりは時給が良かったりします。

 

しかし、問題は歯科技工士さん。

 

歯科技工士さんというのは歯科医にとって必要不可欠な、重要なパートナー。アクアの場合、腕のいい歯科技工の会社に外注しています。

 

たとえば保険のインレーと言われる小さい銀歯をつくるのに、宮崎市では技工料金が1個あたり1000円~1200円。(金属以外の材料費こみ)

すべてオーダーメイドなんですが、完成するのに、数時間もかかるわけです。

さらに少しでも変形したら歯に収まらず、ただで作り直し・・・・・・涙。

 

技工料金が安いとどうなるか。歯科技工士さんが減っていきます。

 

また上手な技工士さんは、安いものは作らなくなります。当然のこと。

概して、安いものは新人技工士さん、

 

熟練した技工士さんは、高いものをつくる!という構図が当然のように出来るわけです。

 

さらに今後は安い労働力をもとめて外国での歯科技工物の作成ももっともっと一般化するでしょう。外国でつくることには今のところ法律で規制はありません。(たぶん)

 

以前中国で生産した入れ歯(日本の患者さんの口に入るもの)の中に、日本で使用できない金属ベリリウムが使用されて、ニュースになったのをご存じですか?

 

肉まんに段ボールが入っているくらいですから、ベリリウムくらいはOkなの?・・・。

 

実際に、技工料金(保険のもの)の値段のひくさは歯科技工士さんの減少と離職率に表れています。

ものすごーーーく必要な仕事なのに、時給で換算すると保険の仕事は恐ろしく低いから・・・。

このままでは将来日本人の歯科技工士さんはいなくなるかもしれません。

 

こんなことでいいのでしょうか?

 

国産とか、ブランドにこだわる日本人が、一番大切なもの(健康)にたいして、選択できないなんて。私だったら、日本人の技工士さんがつくった精密なものを口に入れたい。

さらにTPPというものが、今はぼんやりとしていますが、かならずデメリットとして影響してくる気配です。

 

歯科というのは、この世に絶対必要な職業です。

 

いかに日本の歯科医が努力をして、先進をめざそうとしても制度の問題で、足踏み状態。

 

北欧や、アメリカに差をつけられているだけではなく、最近では韓国にまで追い抜かれている感じがあります。

『先進国の中で歯が悪い国民ランキング』というものがあったら、まちがいなくトップになるにちがいない我が国日本。

 

歯科関係者にとって、壁となっているこの国の制度。その環境の中で、われわれ歯科医の仲間たちは、一生懸命地域歯科医療に貢献しようと、がんばっているんです。

「あそこの歯医者にいったら、値段が高かったーー!。3000円もとられたよ!あそこは高い」

なんて、よくある噂。

 

でもそれは悲しい誤解で

保険治療は日本全国どこでやっても基本的に同じ値段です。

 

世界でもっとも安いといってよい診療報酬で、結構皆真剣に、歯科医療に取り組んでいるんですね。

一般の方に少しでもわかっていただけると幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブログを書きはじめて10年以上経ちました。プライベートな事や歯科治療・地域の話題など、書いた当時は一般的だった内容や表現が今では適切ではないものもございます。過去の記事をご覧になる際は予めご了承ください。